自衛隊は水陸作戦の独自展開能力を獲得、中国「飽和式攻撃」にも対抗―香港メディア
香港メディアの亜洲週刊はこのほど、自衛隊が種子島の海岸で11月25日に実施した演習の取材なども踏まえて、自衛隊は島奪還作戦を独自展開する能力をすでに身に着けており、日本は遠隔地に対する攻撃能力の取得を目指していると論ずる、毛峰東京支局長の署名入り記事を発表した。
11月25日の種子島における演習は、自衛隊が同月19日に開始した全国規模の統合演習の一環として行われた。亜洲週刊記事は上陸前の掃海作業を含めて、輸送艦「くにさき」、エアクッション型揚陸艇「LCAC」、水陸両用強襲輸送車のAAV7を投入した上陸演習を紹介した。
記事は、2018年に設立された陸上自衛隊の水陸機動団について、従来は米国の指導を受けて訓練や合同演習を行っていたと紹介した上で、11月25日には米軍が参加しない日本の自衛隊だけによる演習を実施したとして「水陸機動団はすでに独立して水陸作戦を展開する能力を備えている」と評した。
記事は、岸田文雄首相が陸上自衛隊朝霞駐屯地で11月27日に行った訓示で、「国家安全保障戦略や防衛大綱、中期防衛力整備計画の改定を指示した。いわゆる敵基地攻撃能力の保有も含めあらゆる選択肢を排除せず検討する」と表明し、中国を「十分な透明性を欠いたまま軍事力を強化し、一方的な現状変更の試みを継続している」と批判したことにも触れた。
記事はさらに、日本の2021年防衛費が補正予算を含めて6兆円の大台を超えたことから、岸田政権はもはや極めて長期にわたり続いてきた防衛費の「GDP1%枠」には拘束されず、日本の防衛費は大幅に増加していくとの見方を示した。
記事は、米軍海兵隊と陸上自衛隊が12月4日に行った合同演習にも注目した。同演習では、米軍の高機動ロケット砲システム(HIMARS)と自衛隊の対ミサイル部隊の連携が初めて実施されたとして、「中国の飽和式ミサイル攻撃(ミサイルの数で相手を圧倒する戦術)」への対応を構築するものであり、米軍海兵隊の新たな戦術である「遠征前進基地作戦(EABO)」を検証するものとの見方を示した。
「EABO」とは、敵が占領している離島などを強襲して奪い返し、そこに長射程の対艦、対地、対空ミサイルやロケット、通信システムや情報収集センサーなどを運び込んで前進基地化する戦術のこと。(翻訳・編集/如月隼人)
離島防衛の要 日本版「海兵隊」の水陸一体作戦 (産経)
陸海空の自衛隊による統合演習の一環として、日本版「海兵隊」とされる陸上自衛隊水陸機動団(水機団)の水陸両用作戦が11月25日、鹿児島県の種子島で報道公開された。活発化する中国の軍事活動にさらされる南西諸島の防衛を主な任務とする水機団。占領された離島の奪還を想定した作戦を記者が見た。
轟音とともに上陸
早朝午前7時、朝日に照らされた種子島西海岸。美しい砂浜が数キロ続く長浜海岸が作戦の舞台だ。浜には島を占領した敵のバリケードを模した鉄骨の工作物が整然と置かれている。
作戦はひっそりと始まっていた。沖合10キロほどの海上に待機していた輸送艦「くにさき」などに搭載されていた水陸両用車「AAV7」9両が海岸へ向かってゆっくりと進んでいた。
午前8時前、浜辺に接近していた海上のAAV7から白い煙が上がり始めた。敵の目をくらませるためのスモークだ。9両は続々と上陸し、浜辺に陣取った。89式小銃を構えた水機団員約100人が次々と飛び出し、海を背に半円状に広がって敵を警戒する態勢に入った。1両目の上陸からわずか7、8分だった。
「ブゥォーーーーン」
大型扇風機のようなプロペラ2機の轟音が砂浜一帯に響きわたる。大型車両を積んだエアクッション艇「LCAC」(エルキャック)が水しぶきと砂を巻き上げながら浜辺に乗り上げた。LCACから大型車両を降ろしたところで報道公開は終了となった。
陸自も海上で訓練
実際の離島奪還作戦は上陸前に陸海空の航空機や艦艇による攻撃で敵戦力に打撃を加える。今回も上陸前日までに打撃演習を実施した。上陸後には後続の隊員を次々と上陸させ、先に上陸した水機団員とともに半円状の味方領域を広げていく。施設隊を投入して指揮所や駐留施設を構築し、島を奪還するまで続けるという流れだ。
この日、上陸作戦の後、報道陣はLCACに乗船して輸送艦「くにさき」へ移動し、船上で陸自車両をLCACに載せて発進する場面も公開された。
LCACは戦車などの搭載スペースを取るため船室は非常に狭く、1畳ほどの空間に10人がすし詰めになって乗る。外は風速6・1メートル。うねりで船体は大きく揺れ、記者はすぐに気分が悪くなってしまった。
水機団員は日ごろ、水中に墜落したヘリコプターからパニックを起こさずに脱出するような訓練をこなしている。水機団が「精鋭無比」を誇ってきた陸自空挺団と並び称されるゆえんだ。
くにさきの船体内で陸自の水機団員は、120ミリ迫撃砲を牽引(けんいん)した高機動車を海自の船員と連携しながら格納庫のLCAC上に載せていった。LCACは海自隊員の「グリーンウェル(ウェルドックと呼ばれる格納庫の準備良好)」の合図でプロペラ音とともに発進していった。
対処力と抑止力
水機団は平成30年3月に2個連隊で発足。米海兵隊との共同訓練を何度も経て水陸両用作戦のノウハウを学んだ。一度占領された離島を奪還するには海上から近付き、陸上戦闘で敵を制圧する水陸両用作戦が必要だ。そのために陸自と海自のスムーズな連携が求められ、今回の演習は陸海の連携を確認するのが最大のテーマだった。