衆院内閣委員会は28日、自衛隊・米軍の基地周辺や国境離島の土地利用を規制する法案を、与党と日本維新の会、国民民主党の賛成多数で可決した。立憲民主党は質疑が不十分として採決に応じず審議続行を求めたが、自民党の木原誠二委員長が職権で採決に踏み切った。共産党は法案に反対した。私権制限への配慮などを盛り込んだ付帯決議案も法案に賛成した4党の賛成多数で可決した。
◆米軍基地被害者が「加害者」に?
法案の目的は、基地周辺の土地を外国資本などが押さえ、機能を阻害する行為を防ぐためとしている。具体的な対象区域や阻害行為は法案に盛り込まれず、成立後に政府が決める。審議では、曖昧な線引きによる過度の私権制限を懸念する質問が相次いだ。
論点の一つは、規制対象となる基地機能の阻害行為と基地反対運動との関係だ。政府は、座り込みなどの運動は対象外としたが、阻害行為の具体例は「さまざまな態様が想定される」として明示しなかった。
米軍基地が集中する沖縄を選挙区とする共産党の赤嶺政賢氏は質疑で、曖昧な基準に懸念を表明。「基地から被害を受けている人が、基地機能阻害の加害者になる」と話した。
◆個人情報の調査「負担」
基地周辺の土地所有者に関する個人情報の調査内容も焦点となった。政府は個人の思想信条などは対象外と説明。調査は内閣府や防衛省などの職員が担当し、取得した情報は政府内で共有すると明らかにした。
立憲民主党の大西健介氏は「善良な市民が自衛隊員の訪問を受け、調査を受けること自体が負担になる」と指摘した。
◆対象施設や離島は非公開
対象施設も曖昧だ。政府は検討対象として、500カ所以上の防衛関連施設や484の国境離島を挙げたが、リストは公開しなかった。鉄道や放送局は対象外としたが、将来は対象に含める可能性も認めた。
立民の今井雅人氏は、法成立後に政府が行う施設の選定について「白紙委任はできない」と批判した。
法案は、基地や原発などの周囲約1キロや国境離島を「注視区域」に指定し、国が土地の利用目的などを調査できるようにする。不適切な利用の中止を勧告・命令し、応じなければ罰則を科す。自衛隊司令部などの周辺は「特別注視区域」に指定。200平方メートル以上の土地売買に事前届け出を義務付ける。(新開浩)