障がい者不当解雇事件について(季刊福祉労働152号)

習志野市役所における障がい者不当解雇事件について
-障がい者枠で採用した職員を、職場定着の努力もせずに解雇
ユニオン習志野委員長 菊池 晴知
<相模原と習志野に共通する障がい者排除の考え方>
7月26日相模原で、ショッキングで痛ましい事件が起きてしまいました。今の日本社会の二重三重の搾取、差別構造が生み出した悲惨な事件です。容疑者の青年は「障がい者なんていなくなればいい」と言ったそうですが、障がい者を社会から排除するおぞましい考え方がこんな事件まで引き起こしてしまったことに言葉もありません。
しかしこうしたゆがんだ考え方は、何もこの青年に限ったことではありません。「障がい者排除」を自治体の長が行う、という驚くべき不当解雇事件が千葉県の習志野市役所で発生したのです。
昨年6月「障がい者枠」で習志野市役所に採用された青年を、9か月の「条件付き採用期間」終了後の今年2月末、習志野市長 宮本泰介氏が「能力不足」を理由に不当解雇した、という事件です。
<「障がい者枠」で採用した青年を「能力不足」で解雇した習志野市>
今年の3月16日午後5時前、ユニオン習志野に1本の電話がかかってきました。「昨年6月習志野市役所に正規職員として採用されたが、今年の2月末で解雇された。話を聞いて欲しい」という内容でした。
相談をしてきたAさんは、現在4級の身体障害者手帳を持っています。昨年の6月習志野市役所の「身体障害者枠」で正規職員として正式に採用されました。
しかし最初に配属された職場は介護保険関係の職場で、ちょうど制度改正があったばかり、戦場のような状態でした。初めて社会に出たAさんは、とまどいながらも仕事に慣れようとしていましたが、どちらかというと不器用なAさんは、課長に同僚の前で怒鳴り飛ばされたり、罵声を浴びせられたりしてストレスがたまり、体調を崩してしまいました。人事課にパワハラを訴えても取り合ってもらえませんでした。市役所に「障がい者を職場で受け入れる」研修も受け入れ態勢もない中で、管理職との関係もギクシャクしていきました。(後日、その管理職の「評価」を根拠に不当解雇が行われることになります)
そして6カ月の条件付き採用(民間でいう「試用期間」)が終了する11月30日当日、通常はこの時点で正式採用になるはずだったのに、「正式採用は保留。条件付き採用を2月29日まで延長し、総務関係職場に異動させる」と、突然通告されたのです。Aさんはショックを受けながらも新しい職場で黙々と仕事をこなしていきました。
そんな矢先の2月12日人事課長がAさんとの面談で「苦渋の決断をしなければならない」と解雇をにおわせました。不安に襲われたAさんに追い打ちをかけるように「しばらく実家(関西方面)に帰って休むように」という指示が出され、2月18日には実家の母親に当局から「22日息子さんと一緒に習志野市役所に来るよう」電話指示がありました。母親はその日は予定がある旨答えましたが、受け入れられず、2月22日、遠路はるばる習志野市に来た本人と母親に言い渡されたのは、「能力不足による解雇」という非情な解雇予告通知でした。「解雇予告通知は、本来30日前までに」と労基法に定められているのに、わずか1週間前の通告でした。解雇日(2月29日)までに支払うべき解雇予告手当も3月18日にやっと支払われる始末。まさに「法令違反」のオンパレードです。
<「障がい者への特別な配慮はしない」と公言し、労使交渉を拒否する当局>
不当解雇されたAさんが、解雇の根拠になった課長の評価を公開するよう求めたところ、評価欄はすべて墨塗りでした。解雇の理由さえ本人に示せない。考えられません。
Aさんとユニオン習志野は習志野市当局と2回労使交渉を行いましたが、総務部長は「法定雇用率をクリアするために身体障がい者枠で採用したのであり、他の一般職と同じ能力が求められる。障がい者だからといって、特別の配慮はしない。」と驚くべき発言を行い、また「解雇については習志野市の管理運営事項(裁量の範囲)であり、これ以上の交渉には応じない」と、交渉拒否を宣言したのです。
<抗議が殺到しても障がい者団体との話し合いを拒否する市長>
新聞にもこの問題が報道され、全国に衝撃を与えました。習志野市民や全国の障がい者団体や個人、市民、労働組合から抗議電話や手紙・メールが殺到し、抗議の市内宣伝活動や市役所包囲デモが行われ、6月議会は8人の市議がこの問題で質問する、という異例の事態になりました。しかし宮本泰介習志野市長は、「障がい者を差別したのではない。能力不足で解雇しただけ。顧問弁護士に相談して出した結論だ」と、かたくなに解雇撤回を拒否し、挙句の果てには一般質問する野党側議員にヤジを飛ばす、という乱調ぶりでした。傍聴者も、市長の傍若無人な態度に、ただただ驚き、怒りました。更に市長は障がい者団体からの話し合い申し入れをも拒否してきたのです。
<障がい者法定雇用率を守らず、労働局から指導された習志野市当局>
「障害者雇用促進法」では自治体の障がい者法定雇用率は2.3%となっていますが、習志野市は2008年以降ずっとこれに違反し2014年には県下最下位「あと5.5名障がい者を雇わなければ法令違反」という異常事態でした。
千葉労働局から是正指導が行われ2015年4月には非正規で4人雇用、6月には「障がい者枠」で正規2名を雇用し、やっと法定雇用率をクリアしましたが、2名のうち1名は退職、もう1人のAさんも不当解雇され、再び法令違反状態になりました。「法令違反だ、と指摘されたので仕方なく障がい者枠で雇用したが、障がい者を職場に受け入れるための配慮はしない」という習志野市の法令順守意識の低さ、障がい者差別体質が今回の解雇事件を引き起こした、と言えます。
<闘いの拡大を恐れて「ユニオン習志野」委員長らを不当逮捕!
しかしすぐに取り戻す>
そして驚くべきことに、この闘いの拡大を何とか押さえこもうと、7月12日、「ユニオン習志野」の2名(委員長の菊池と執行委員S)を「詐欺罪」でデッチあげ逮捕し、労働組合の旗や腕章、組合関係の書類を押収する、という「異様な」労働組合弾圧が行われたのです。「書斎や職場・地域の話し合いとして使い、ときどきSさん(現在「ユニオン習志野」の執行委員)が泊まる」として不動産屋を通じて大家さんの了承を得て借りたアパートなのに「大家に断らず勝手にSさんが泊まった」などと100%の言いがかり、デッチ上げを行ってきたのです。解雇撤回闘争に対する労働組合弾圧であることは明らかです。「大久保製壜闘争」への弾圧を思い起こす方もいるでしょう。
「こんなことが日本で起きているなんて信じられない!」あまりにデタラメな攻撃にユニオンの組合員も、多くの労働組合・市民もビラまきや市役所・警察・裁判所への抗議行動、傍聴に立ち上がって習志野市当局と警察を追いつめ、7月22日にはついに2人とも不起訴・釈放となりました。
<闘いはこれから>
これから、解雇撤回闘争は、法廷闘争の段階に入ります。労働者への不当解雇であると同時に、障がい者を差別し排除する、という問題でもあることを更に広く訴えていきたいと思います。行政がこのような危険な障がい者排除思想を内在しているということは、相模原の一青年の身勝手な差別意識による大量殺人よりも、ある意味恐ろしいことかも知れません。どうかこの問題にご関心を寄せてくださり、今後とも御支援くださるようお願いします。
ユニオン習志野は習志野市役所で働く労働者で2015年7月に結成した、正規も非正規も入れる労働組合です。
お問い合わせ、ご連絡は
TEL:047(429)8335 メール:union5nara@yahoo.co.jp までお願いします

 

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