千葉地裁第一回訴訟(2016/12/10報道)

東京新聞2016/12/10 千葉中央版 掲載

「障がい者の雇用差別」
習志野市解雇訴訟 初弁論で男性訴え

習志野市に正規職員で採用され、試用期間終了直前に解雇された障がい者の男性(29)が市に解雇の取り消しなどを求めた訴訟の第一回口頭弁論が九日、千葉地裁であった。男性は意見陳述で「九カ月での解雇は乱暴で、これでは障がい者の差別のない雇用はいつまもでも実現されない」と訴えた。被告の市側は全面的に争う姿勢を示した。
男性は「母の前で解雇予告通知をされ、絶望に陥っていたが、いろいろな人からの励ましで、また市民のために働きたいと思った」とも述べ、職場復帰を強く求めた。
訴状によると、生まれつき左足が不自由な男性は昨年六月、障がい者枠で一般事務職で市に正規雇用された。九カ月の試用期間が終わる直前の今年二月末に解雇された。障がい者という理由での不当解雇だと主張している。
被告側は答弁書で「障がい者であることが理由ではなく、勤務成績不良で正式採用とならなかった」と反論している。
閉廷後、千葉市内で報告集会が開かれ、支援者約八十人が、男性にエールを送った。障がい者団体「『骨格提言』の完全実現を求める大フォーラム実行委員会」の横山晃久委員長(62)は「障がい者差別解消法があるのに、なぜこんな事が起きるのか。泣き寝入りせず闘おう」と話した。(服部利崇)

習志野市が「勤務成績」理由に、試用期間後に解雇(週刊金曜日2016/11/4)

習志野市が「勤務成績」理由に、試用期間後に解雇――障がい者の解雇取り消しを

障がい者枠の試用期間終了後に、「勤務成績が良好と認められない」として、千葉県習志野市から解雇された障がい者のAさん(男性、29歳)は、10月11日、免職処分の取り消しを求めた訴訟を千葉地裁に起こした。訴状は、職場への復帰を求め、700万円の損害補償を請求するというもの。
訴訟にあわせ、同日夕方にAさんの支援者40名強が、同市大久保のゆうゆう館で裁判を勝ち抜くための集会を開いた。集会では、担当弁護士の山本志都氏が「Aさんの解雇は、相模原市の津久井やまゆり園(障がい者殺傷)事件を起こした容疑者の、『“役に立たない”障がい者がいなければいい』との考え方と根底の部分で繋がる。障がい者枠で採用した障がい者を能力不足で9カ月で解雇することが許される、悪しき事例を宮本泰介市長はつくった」と述べた。
習志野市は2014年度、障がい者の法定雇用率(2・3%)を達成しておらず、雇用率が千葉県下市町村91機関(公立病院等含む)の最下位となった。そのため、厚生労働省千葉労働局から5・5名の障がい者を採用するよう要請を受けていた。このような経緯から、昨年6月、Aさんは、9カ月の条件付き採用期間(試用期間)で、障がい者枠で採用された。
Aさんは、左足が不自由。当初、介護保険課に配属されたが、介護認定日を通常のルールより早めたり、遅めたりする理由がわからず、当時の上司に質問したが、まともに取り合ってもらえなかった。そこで、介護保険課の業務遂行に疑問があることを述べて、異動を希望した結果、総務部総務課に配属され国勢調査の事業内容の記入や、会議録をボイスレコーダーから文字起こしするなどの事務作業を担当した。
ところが、今年2月22日、Aさんは、突然、斉藤勝男総務部人事課長(当時)などから呼び出され、「勤務成績が良好と認められないため、正式採用しないこととなりました」として、試用期間が終了する2月29日付の免職を示す解雇予告通知書を手渡されたのだ。
Aさんが同課長に、「勤務成績が良好と認められない」とする理由を尋ねたところ、「普通の人が7日かかる仕事が10日かかる。ボイスレコーダーの文字起こしのときに、誰の発言内容なのか正確にできていない」などと述べた。
Aさんは「発言者会話が聞き取りにくく、誰の発言かわかりにくかった」などと、反論する。
【パワハラの訴えも】
その後、Aさんは、労働組合「ユニオン習志野」に助けを求めた。菊池晴知委員長は、「障害者差別解消法が施行される4月1日の直前に解雇することは、差別解消法の施行で容易に解雇できなくなるからだ」と憤慨する。
4月に行なわれた同ユニオンと習志野市役所との交渉では、総務課(注:「介護保険課」の誤り)の上司がAさんにパワハラをしたとして人事課に訴えたことも明らかになった(総務部長は「上司は『パワハラではなく、指導だ』と言っていた」と交渉で答えた)。
Aさんの解雇を巡っては、市民団体等から「障がい者枠で採用されたのだから、当然ハンディを考慮しての採用だろう」など福祉行政への疑問の声が上がった。市議会でも「弁明の機会を与えられず、免職に関する市の規定がない現状では裁量権の濫用だ」「宮本市長が掲げる『やさしさでつながるまち』に反する」などと批判されている。
今回の訴訟について、小平修・現人事課長は「何も答えられない」としているが、筆者の取材では、介護保険課の上司が、Aさんの疑問に真摯に向き合うことなく、上司に反発するものは排除するという“公務員のムラ社会”の一面が垣間見られたことも否めない。
いずれにしろ、「Aさんの解雇は、本来の障がい者雇用のあり方ではない。障がい者の能力にあった部署に配属させるべきだ。たとえ、就業能力が劣っていても、各職員が仲間として、働こうという意識がなかったのではないか。共存共栄の障がい者雇用に繋がっていない」(山本弁護士)のである。(小川正・ジャーナリスト、11月4日号)