「現代ビジネス」2020年6月4日号より
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73034
まもなく、首都圏を飛び回る
木更津が本格的な「拠点」に
防衛省はオスプレイの整備工場がある千葉県木更津市に整備体制の強化を申し入れた。現在、陸上自衛隊木更津駐屯地で米海兵隊のオスプレイ2機の定期整備を行っているが、これを最大で7機整備できる体制とし、将来は、この米軍の同時7機整備と自衛隊版オスプレイの同時3機整備に対応するため、格納庫を新設するという。
これにより、木更津駐屯地は本格的な日米オスプレイの拠点になることが確定する。
だが、より重要なのは、この申し入れに「ある一文」が潜り込んでいたことである。防衛省が木更津市に渡したA4版2枚の書面には小さく、「2023年以降、米海軍のCMV22の整備も想定」とあり、2023年以降、日本に米海軍版のオスプレイが配備されると取れる内容となっている(https://www.city.kisarazu.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/007/016/aaa.pdf)。
防衛省は、米海軍版オスプレイについて、配備時期はもちろんのこと、「日本に配備される」と言及したことさえない。新型コロナウイルスの感染拡大のどさくさに紛れて、新たな配備を既成事実化させる狙いがうかがえる。
米海軍版のオスプレイは、米空母「ロナルド・レーガン」に搭載されているC2輸送機の後継機。C2は陸上から洋上の空母へ兵士や補給物資を空輸する役割があり、空母には欠かせない輸送機だが、老朽化により、オスプレイと交代することになった。
オスプレイは沖縄県の普天間基地に配備されている米海兵隊版と、東京の横田基地に配備されている空軍版、そして海軍版の3種類がある。いずれも基本的な機体構造に変わりはない。
海軍版オスプレイの最大の特徴は、機体の左右下部にある張り出しが大型化され、燃料タンクを拡大したこと。これにより、航続距離が延びた。
製造元の米ボーイング社は、自社のHPで「6000ポンド(約2700kg)の物資を搭載して1150海里(約2100km)の飛行が可能。米空母に搭載されるF35C戦闘機のエンジンを飛行甲板まで空輸できる唯一の航空機である」と、海軍版オスプレイの搭載量と航続距離を自慢している。
艦内に巨大な格納庫を持つ「ロナルド・レーガン」は、当然ながら戦闘機の予備エンジンを多数搭載しており、オスプレイによる予備エンジンの空輸がどれほど現実的かは分からない。
起こりかねない「予期せぬ事故」
とはいえ、垂直離着陸ができるオスプレイの特性は、空母で便利なのは確かだ。発艦する際に航空機が勢いよく打ち出されるカタパルトを使用することなく、また着艦時に、高い技量を必要とする機体下部のフックを甲板上のワイヤーに引っかけて停止させる必要もない。
離発着が最難関とされる空母から難なく発艦し、着艦できること自体がオスプレイの大きな利点といえるだろう。だが、それは同時に最大の欠点でもある。
2017年8月、普天間基地のオスプレイがオーストラリア沖で揚陸艦に着艦する際、自身が発生させた強烈な下降気流が艦体にはね返り、回転翼の弧に入り込んで墜落、3人の乗員が死亡した。同様の事故は、米本土でも2015年12月に起きている。
艦艇とオスプレイの組み合わせは、予期せぬ事故を招きかねないのだ。
つづく首都圏上空を飛び回る